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数学屋さんの数学小話 ~番外編:ポワンカレ予想~

先日ある先生から、NHKスペシャル「数学者は宇宙をつなげるか? abc予想証明をめぐる数奇な物語」が面白かった!と話しがあったので、今回番外編として、高等数学の一種である位相幾何学にちなんで、ポワンカレ予想についてお話ししたいと思います。

皆さんは「宇宙の形」について考えたことがありますか?「そんなの当然球体だろう!」という人もいるでしょう。ただ、それを確認した人も確認する術もありません。そんな宇宙の形を考える方法としてあげられるのが「ポワンカレ予想」です。

~宇宙の形とポワンカレ予想~


1900年代初めのフランスの数学者アンリ・ポワンカレの提唱したポワンカレ予想、これを数学的にお話するのは難しいですが、簡単に言うと「無限に長い紐をロケットにつなげて、宇宙一周させる。この紐を引っ張って回収することが出来たら、宇宙は概ね球体だろう。」ということです。

紐を引っ張って回収できる!
真ん中が引っかかって回収できない!

ただ、この考えだと宇宙の形がどのようなものなのか「あらゆる形を想定しないといけない」という欠点があります。そこで必要になるのがトポロジー(位相幾何学)です!

~形の種類とトポロジー~


トポロジーとは、何らかの形を「伸ばしたり曲げたりすることはするが切ったり貼ったりは出来ない」というルールをもとに変形させていくと、物体の種類が限られるというものです。
例えば、コップをつぶしてまとめるとボールになります。

ところが、マグカップは取っ手があるのでドーナツになります。

このように物体の形をシンプルにどういう種類なのかを考えるのがトポロジーと言われる分野です。この考えを用いたがポワンカレ予想です。

~宇宙の形は何種類?~


 トポロジーの考えを用いると、宇宙を作る形は8種類で、この8種類の組合せから宇宙全体が出来ていることが、ポワンカレ予想を証明したロシアの数学者グレゴリー・ペレルマンによってわかりました。
 この8種類のうち代表的なのが、最初の話に出てきた球体やドーナツ型、他にもクラインの壺というのもあります。

クラインの壺:表面を辿っていくと気が付けば裏面になっている図形

宇宙の形がどのような形か確定したわけではありませんが、見ることが出来ないものや知ることの出来ないことに関して、知恵を振り絞り状況を絞ることが出来るのは素晴らしいことだと思います。
 ちなみに、どのくらい知恵を振り絞ったかというと、位相幾何学や解析学と熱力学(物理)を組み合わせて証明したため、当時の数学者は物理がわからないため理解できず、物理学者は数学がわからないため理解できなかったと言われています。

 この功績から、2006年に数学のノーベル賞とも言われているフィールズ賞に選ばれましたが、「自分の証明が間違っているなら賞はいらない」と受賞を辞退したとのことです。ペレルマン本人は名誉と賞金を辞退して隠居し、親しい友人にはお金がないとぼやいていたそうです。

 今回は番外編と言うことで、ポワンカレ予想についてお話ししました。自分が疑問に思う真理を追究したペレルマンは受賞辞退も含めて、数学者らしい数学者だと思います。
 疑問を解決する力もそうですが、「疑問を解決したいという心」が何よりの力だと思います。私も「疑問を解決したいという心」を忘れず数学に臨みたいと思います!

みんなにも読んでほしいですか?

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