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異常な液体「水」

水は,ごくごくありふれた液体である。
これを否定する人はいないだろう。

そんな,ごくごく当たり前に存在している「水」だが,特異な性質を示すことで有名である。そんな異常な液体「水」について性質を見ていこう。

万物の起源ともいわれた水

かつてのギリシアに,タレスという人物がいた。タレスは,現在記録が残っている中で最も古い哲学者とよばれる人物だ。
タレスは,様々な自然現象について考え,その起源や原理を見出そうとした。

その中で,タレスは「万物の根源は水である。」と考えたらしい。この世のすべての物質と呼ばれるもの全ては,もともと水であった。と考えたのだ。

タレス

実際には,万物は原子でできていることが分かっており,この考えが誤りであることは明確だ。しかし,全ての物質のもととは何か,これを考えたときに,「水」という物質が挙げられたのだ。

シュメール神話にはナンムという女神が登場する。この女神ナンムは,「海」という意味でも使われた。ナンムは,全ての母なる存在であり,世界の創造よりも前に存在した神として登場する。

海という水たまりを根源に据え,世界の創造について考えたという意味では,タレスもシュメール神話にもそこまでの差異はないのかもしれない。
それほどまでに,ありふれていて,存在が謎であったのである。

異常液体

氷が水に浮かんでいる様子を見たことがあるだろうか。
そして,氷が水に浮かぶ様子に何か疑問を持ったことがあるであろうか。

凝固では,基本的には物質の体積が減少する。しかし,液体の状態と固体の状態の2つにおいて,構成する原子の数に変化はない。
よって,質量が変わらないままに,体積だけ小さくなる。つまり,凝固すると密度が大きくなる。

液体に浮くのか浮かないのかは,液体とその物体の密度が深く関係している。物体の密度が液体よりも小さければ浮き,密度が大きければ沈む。

氷は水が凝固した状態である。つまり,通常ならば氷の方が水よりも密度が大きくなるのだ。そして,密度が大きい物体は沈む。氷が水に浮くはずがないのだ。

しかし,実際には氷は水に浮く。これは異常である。
他にもこの異常な性質を示す液体はあるが,その中でも最もありふれており,身近な物質はH2Oであろう。

異常な密度グラフ

H2Oは,固体の氷の方が密度が小さく,液体の水の方が密度が大きい。それは,分かった。

しかし,水の密度にはさらに疑問点がいくつかある。

理想気体ならば,同圧の下ではシャルルの法則に従い,温度が上昇すればするほど体積は大きくなる。その一方で構成する原子の数は変化しないことから,密度は小さくなっていくはずである。

しかし,このグラフを見ると,0℃から10℃まではほぼ横ばいのグラフになっているように見える。

拡大してグラフをよく見てみよう。

なんと!!
本来小さくなっていくはずの密度が途中までは大きくなっているのが分かる。

これは,異常である。

因みに,私が個人的に所有している理科年表のデータによると,

水は3.98℃で最大値999.97 kg m^-3となる.

出典:理科年表2020

なぜ,このような現象が起きるのか,2018年3月26日に東京大学の研究グループが研究成果の発表を行っている。

身近な未知は非常に多い

ここまで身近な液体「水」について,多くの性質を挙げてきた。
しかし,水が正常でそれ以外の液体が異常なのかもしれない。少数派が必ず間違っているなんてことはない。

身近に感じている物であっても,解明されていない謎が潜んでいることも多々あるであろう。
その疑問や謎を見出して考えていくことも今後の科学の発展に必要なことだ。

興味がある人は是非とも「ジヒドロゲンモノオキシド」という物質について調べてみて欲しい。
如何に自分の認識というのがズレるのか経験できるであろう。

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