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未来のパートナーのために学ぶ

少し間が空いてしまいましたが、今日は11月21日(金)に実施した特別授業のご報告と後日談を。

学校ホームページにも掲載されていますが、2年生対象に出版社の宝島社さんに「女性の生理」についての特別授業を行っていただきました。


え、男子校で生理の授業???

と思われますよね。

なんとなく、触れてはいけないような、聖域のような、若干タブー視されているようなキーワードである「生理」。

女性は毎月経験し、様々な体調不良があるなかで日常生活や仕事に取り組んでいるわけです。それが辛くても我慢して出勤したり、登校したり。なかなか言い出せないことだからこそ、周りも気づけないし、当たり前のこととして生活しています。

しかし「生理」に関しての驚きの数字も。

「月経関連症状による労働損失は年間約5000億円」

「通院、医薬品費用と合わせると経済損失は年間約6800億円」というデータも出ています。

その中で、女性が抱えるさまざまな悩みをテクノロジーによって解決に導く商品やサービスのことを指す、フェムテックという言葉が生まれました。フェムテックとはFemale(女性)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語で、約4年前から使われ始めたそうです。2021年には新語流行語大賞にもノミネートされました。

今回特別授業をしていただいた宝島社さんは、10~60代までの女性誌11誌・男性誌2誌の計13誌合同によるフェムテック・フェムケア啓発プロジェクト「もっと話そう! Hello Femtech(ハローフェムテック)」を始動し、雑誌を通じてまだまだ認知度の低いフェムテックを広める活動をされています。

男性誌2誌の『MonoMax』や若者向け男性ファッション誌『smart』は本校の生徒も知っていました。50代以上の女性向け『大人のおしゃれ手帖』も有名な雑誌ですよね。

今回の特別授業も、啓発活動の一環として企画されましたが、学校としては「女性に配慮できる男性」の育成、以前より掲げてきた「リトルジェントルマン」の育成につながることと思い実施しました。

特別授業にお越しいただいたのは、女性ファッション誌『SPRiNG』編集長の丸山摩紗さんと、SOWAKAクリニック院長・産婦人科医の竹元葉先生。

同世代の異性が抱える健康課題のひとつである「生理によるホルモンバランスの変化がもたらす体調不良」を理解すべく、生理のしくみについて分かりやすく教えていただきました。

ここで先生にお願いしたのは、「ド直球に、包み隠さずお話しください」ということ。

オブラートに包んだような言い方は無しにしてもらい、正しく理解することを目標にお話ししてもらいました。

さすが産婦人科の先生。打ち合わせの際「わかりました、いいんですね?」という言葉通り、経血の話とか、女性の体に何が起きているのか、ストレートにお話しいただきました。

また、生理用品の実物を回覧し、CMで見る生理用ナプキンとはどんなものなのかを手に取って見るという時間も設けていただきました。さらに生理や避妊、性感染症のQ&Aも実施。その際も、竹元先生は正しい知識を正しい言葉で解説してくださいました。

企画した側として、教員Hも授業の始めと終わりにマイクを持たせてもらいましたが、そこで生徒に念押ししたのは「将来関わる女性を傷付けないために」「未来のパートナーのために」学んでいるということ。

偏った知識や間違った知識で接して、言葉のかけ方やタイミングで相手を傷つけてしまうかも。ちょっとしたことで怒らせてしまうかも。

今は男子校で男ばっかりの中で気取らずに生活しているけど、進学、就職をしたらそうはいきません。周りには同年代の女性もいるはずです。さらにはお付き合いをして、将来のパートナーにも出会うかもしれません。そのときに、どう対応できるか。どう配慮できるか。

当たり前ですけど人それぞれ違うはずで、月経関連症状の重さの違い、生理であることを声に出すことへの抵抗感の違いもみんなバラバラです。

男性ができることって、まずは察することかなと思うんです。

なんかいつもと違うな、気分悪そうだな、ちょっとイライラしているな、とまずは感じ取ること。

部屋の温度を上げたり、温かい飲み物を用意したり、「生理中の女性にはこうしてあげよう」をいきなり実践するんじゃなく、まずは感じ取って、相手がどうして欲しいか考えることが大事なのかと思います。

その「察する」ために必要なのが「配慮」だと思います。常に相手のことを考え、慮っていないと微妙な変化にも気づけず、察することもできません。

正しい知識を身につけることは、配慮できるための土台です。「将来関わる女性を傷つけないために」今回学んだことはしっかりと覚えておいてほしいと思います。


フェムテックの代表選手「ピル」

今回の授業の中で印象に残ったことの一つとして、「低用量ピル」の服用についてのお話がありました。

どうしても「避妊のための薬」という印象が強いピルですが、最近では女子中高生が受験の日程に合わせて生理のタイミングをコントロールするために服用するんですって。

受験当日にベストパフォーマンスが発揮できるように、産婦人科の先生がどのタイミングで飲めばいいかを計算して処方してくれるそうです。

(「来年娘が受験生なんですよ~」と言っているそこのお父さん、お母さん、受験日の何カ月も前から計算して服用するそうなのでご相談はお早めに。)

似たような話で、スポーツ選手も試合日程に合わせて服用する人が増えていると聞いたことがあったので、なるほどなぁ~、と。

これは後日談になりますが、12月12日に日本経済新聞社主催の「Hello Femtechアワード2022」に招待されて行ってきました。

そこで紹介されていたのが、「オンラインピル処方」「フェムテックを福利厚生に」というお話。

「ピルは避妊薬」なんて、もう時代遅れの古いイメージだそうです。女性が活躍できる社会の実現に、ピルは有効な手段として当たり前になってきているわけです。

このセミナーの最後に登場したのが、つるの剛士さん、バービーさん、潮田玲子さん。今年の「Hello Femtechアワード」著名人部門で受賞された3人の表彰式とトークショーもありました。

その中で、元バドミントン日本代表の潮田さんも女性アスリートと生理との関わり方について言及してました。昔は我慢して当たり前、というか男性指導陣は生理のことなんか意識の外だったそうです。それに対してバービーさんも「ナショナルチームでもそうなの!?」とリアクションしてました。今ではピルを使ったパフォーマンスコントロールも徐々に浸透し始めたようですが、潮田さんは団体を立ち上げて、女性アスリートを目指して頑張る女の子、その保護者やコーチに正しい情報を伝えるために啓蒙活動をしているそうです。

著名人のトークショー、さらにその前に実施された官民の代表者によるトークショーの中でも上がった声として「フェムテックの広がりは話し合うことが大事」「男女関係なくみんなで一緒に変わっていかなくてはいけない」「パートナーとの話し合い、子供への正しい性教育の大切さ」という、話し合いの大切さ

トークショーのスライドの中で特別授業の写真を使ってくださいました!学校名もバッチリと!

「話し合い」「正しい教育」については、特別授業の最後の質疑応答の中で本校の生徒からも意見が上がりました。

「生理という言葉は下ネタの雰囲気が抜けきれず、今に至っている。性教育は小学生のころからやるべきではないか」

この意見に、特別授業をしてくれた丸山さんも竹元先生も驚愕&感動してくれました。(まさかそんな意見が出るなんて、自分もビックリでした笑)

竹元先生はそれに対して「性教育は学校で教えるべきものでもあるが、本来は家庭で教えなくてはいけないもの」とのお答え。

最近は性に関する子供用の絵本も増えてきてますよね。

今までタブー視してきた生理について、男女関係なく正しく知ることが、これからの時代大切になってきます。女性としては「恥ずかしい」「言いにくい」ことかもしれないけど、言ってくれたら「大丈夫だよ」「何でも言って」と支えられる男性が増えることが、フェムテックの広がりと同時に必要なことなのかなと感じました。

正しい知識を持って「察する」ことと「どっしり構える」ことができる男性に本校の生徒もなってもらいたいと思います。そのためにも「未来のパートナーのために学ぶ」今回の特別授業を、来年度以降も実施したいと画策しているところです。

今回ご協力いただいた皆様、今後ともよろしくお願いいたします!


今回の特別授業、TBSさんの『news23』でも扱っていただきました。YouTubeでもその部分が見られるようになっていますので、ぜひご覧ください。


編集後記

招待いただいたセミナーの中でのトークショーでもう一つ印象的だったのが、「私たち女性は特別扱いをしてほしいんじゃない。女性特有の悩みをクリアすることで、同じスタートラインに立てる。」という言葉。

フェムテック事業の拡大とともに「女性だけなんて不平等だ」という声が上がったんですって。いやいやいや、そんなこと言う男がいるの?(笑)

毎月一回体調不良が来て、内臓の一部が剥がれて出血して、生活中にダラダラ血が出てきて、股が血でべたべたになって、そんな状態で同じように仕事してんだよ?すごくない?

それなのに「特別扱いじゃなくて、フェムテックの活用で同じスタートラインに」って、なにその考え方。すごくない?

普通の会社なら「生理休暇」ってあるじゃないですか。まだまだ使いづらい風潮があるのかもしれないですけど……。労働損失5000億円って計算しちゃうくらいですからね。

そう思うと、フェムテック事業の拡大や「フェムテックを福利厚生に」というのはこれからもっと注目されるべきことだなと思います。SDGsにも「5,ジェンダー平等を実現しよう」っていう目標もありますしね。

うちの妻は割と”話す”方なので、ちょっと分かっていたつもりでいましたが、フェムテックという言葉には今回がはじめましてでしたし、生理についての新常識も知ることができました。情報はどんどんアップデートされていきます。「生理は我慢しなくていい」というのがスタンダードになっていく将来も近いはずです。時代遅れにならないためにも、パートナーのためにも、常に勉強ですね。

改めまして、今回お世話になった皆様、ありがとうございました!



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